no.9 2008.10.7

中国産原料乳へのメラミン添加の問題について

中国国内での「乳児用ミルク」による腎臓疾患の発症から表面化し、対応の遅れと事態の重大さから、国家品質監督検験検疫総局長が辞任する等の問題に発展しています。香港、台湾をはじめ、EU、カナダや我が国の製品からも「中国産乳製品を原料とした製品からメラミンが検出」される事態となり、我が国の食品のどこまで影響が及ぶのか大変心配です。
本年6月に公表された「輸入加工食品の自主管理に関する指針(いわゆるガイドライン)」に基づく点検・管理を開始された企業の皆さんにとっても、製造工場における管理強化に加えて「原材料生産地」での故意による薬剤混入防止まで点検しなければならない状況となり、どこまで確認すれば安全が保証できるのか、品質管理(品質保証)担当者としては、悩みが尽きない状況となっています。

さて、この問題は「牛乳とメラミン」だけの問題としてかたづけてしまってよいのでしょうか。
なぜ、原乳にメラミンを添加したのかと言う背景事情から俯瞰してみますと・・・
・量を多く売りたいから、水増しした。
・水増しした「低蛋白の原乳」では高く売れない(値切られる、買ってくれない)
・受入検査は「総窒素量」の検査なので、安定で安価なメラミンを使うと良いと勧められた。

これらの原因(理由)と考え方の異常さをもとに、他の食品に当てはまらないかを考えて見ますと、以下のような色々なことが見えてきます。

@ 原材料の受入検査で「総窒素(粗蛋白)、塩基性窒素量」等を基準化し、検査しているものはないか。
 (植物蛋白、粉末蛋白、蛋白分解物、調味料・・・?)
※ これらにメラミンの混入の可能性はないか。
※ メラミン以外に「窒素量を多く見せかける薬剤」はないか、使用の可能性はないか。

A 粗脂肪、可溶性固形分、BX(ブリックス)等「簡易な検査による基準」の受入をしているものに、同様の問題の波及はないか。
※ グリセリンの増量にジエチレングリコールを添加(ハミガキ、口腔清涼剤)
※ 粗脂肪分増強のための「鉱物油の添加」(ヒマワリ油)
※ 糖度アップのための砂糖の添加(ハチミツ)

すでに、ニュースでもおなじみの、これらの問題が、実は同じ理由(原因)に発していることがお分かりになるのではないでしょうか。


そもそも、中国における原料素材の流通は、農民個々に物流手段がなく、いわゆるブローカーが農家を巡回・集荷し、工場等に販売するシステムのため、素材の安全性は、ブローカー個々が、どの程度「原料の品質を点検」しているか、にかかってくるわけですが、実際には、必要な教育も知識も、農民と大差なく、検査等を実施しているとは思えませんので、原材料の品質を見極めるのは、ひとえに製造工場の「受入検査」の精度と頻度に頼るしかありません。
やはり、生産の現地(産地・工場)を、足繁く訪問し、原材料の受入検査の信頼性の検証と、生産地や製造工場に存在する薬剤等の調査と、故意にあるいは誤って混入しないよう「現場から排除あるいは、管理強化」するよう指導すること、信頼性の高い工場(経営者)、生産者を選定することが大切であることを、改めて認識しましょう。





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