2021.9.2
no.56

食中毒ついて(2)
 食中毒の種類
 1 微生物性食中毒
   1) 腸炎ビブリオ
  腸炎ビブリオは好塩菌であり海水中に生息します。腸炎ビブリオが多い時期に捕獲された魚介類は不適切な取扱いにより増殖し食中毒の原因となります。すしや刺身が原因食品で8~24時間の潜伏期間で激しい腹痛、下痢、発熱、嘔吐を起こします。腸炎ビブリオは加熱により死滅しますが、魚介類を生で食べる場合は徹底した冷蔵保存(4度以下)が必要です。
   2) サルモネラ属菌
  サルモネラ属菌は動物の腸管や河川などの自然界に生息します。汚染された食品の摂取により発症し高熱を出します。サルモネラ属菌の一つであるサルモネラ・エンテリティディスは卵や関連製品が原因食品で8~48時間が潜伏期間で腹痛、下痢、発熱(38~40度)、嘔吐を起こします。卵料理は十分な加熱が必要で、卵を生で食べる場合は新鮮な卵でできるだけ速やかに食べる必要があります。
   3) 腸管出血性大腸菌O157
  大腸菌は人や動物の腸管に存在し病原性はありません。しかしいくつかの大腸菌は人に対して病原性があり、特に腸管出血性大腸菌O157はベロ毒素を産生し、出血性大腸炎を起こします。腸管出血性大腸菌O157は牛の腸管に生息している場合があり、糞尿で汚染された牛肉の二次汚染であらゆる食品が原因食品となります。潜伏期間は3~8日で症状は激しい腹痛、水便、血便を起こし、また一部の人は溶血性尿毒症症候群(HUS)や、脳障害を起こすことがあり、重症の場合は死に至ります。生野菜は十分な洗浄、肉類は十分な加熱が必要です。
   4) カンピロバクター
  カンピロバクターは家畜、家禽、ペット等の動物の腸内に生息し、処理過程で生肉が汚染された場合、食中毒の原因となります。5~15%の酸素濃度で生育する微好気性菌で、少ない菌数(100個程度)で発症します。潜伏期間は2~7日で腹痛、発熱、下痢等を起こします。予防には食肉は生を避けて十分に加熱すること、また、生肉から野菜等への二次汚染を防止するため調理器具は洗浄する必要があります。
   5) ボツリヌス菌
  ボツリヌス菌は土壌等の自然界に分布している嫌気性菌で、食品中のボツリヌス菌の芽胞が低酸素状態で発芽、増殖し毒素が産生されます。毒素を含んだ食品を食べると潜伏期間8~36時間で頭痛、嘔吐や嚥下障害、言語障害、視力障害などの神経症状が起こります。重症は呼吸障害で死に至ります。無酸素状態の食品が原因になりやすく、瓶詰、缶詰、真空パック食品等を原因として食中毒を発生します。予防に食品中の菌の増殖を抑えることが必要で、120℃4分以上の加熱又は冷蔵保存が求められます。
   6) 黄色ブドウ球菌
  黄色ブドウ球菌は健康な人の鼻粘膜、皮膚、毛髪等に生息しており、食品中の黄色ブドウ球菌は増殖時にエンテロトキシンという毒素を産生し、毒素を含んだ食品を食べることにより、潜伏期間1~6時間で吐気、嘔吐、腹痛を発症します。調理加工食品、おにぎり、寿司等の多岐にわたる食品が原因食品となりえます。手指に切り傷、化膿性疾患がある人は食品に触れない、調理しないことが大切です。
   7) ウエルシュ菌
  ウエルシュ菌は人や動物の腸管、土壌に生息しており、ボツリヌス菌と同じ嫌気性菌です。熱に強い芽胞は加熱調理でも生き残り、大量調理の場合、食品の中心部が無酸素状態となり、発芽して増殖します。これを食べると6~18時間後に、小腸で毒素を産生し腹痛、下痢が起こります。大量加熱調理食品は作り置きせずになるべく早く食べることが大切です。
   8) セレウス菌
  セレウス菌は土壌に生息している菌で、耐熱性の芽胞で生存しており、加熱調理食品を作り置きしている間に発芽・増殖し毒素を産生し、食中毒を起こします。2つのタイプがあり、嘔吐型は食後30分~3時間で吐気・嘔吐、下痢型は食後8~16時間で下痢・腹痛を起こします。加熱調理食品は作り置きしない事、作り置きする場合は少量に分けて低温保存することが大切です。
   9) ノロウイルス
  ノロウイルスはカキなどの二枚貝が原因となる事が多く、感染者の便や吐しゃ物からの2次汚染も原因の一つです。潜伏期間は1~2日間で吐き気、嘔吐、下痢、腹痛、発熱の症状を起こします。カキなどの二枚貝は十分に加熱してから食べることが必要で、2次汚染を防ぐためにはトイレ後、調理前、食事前の手洗いが重要です。
   
 2 寄生虫食中毒
   1) アニサキス
  アニサキスは、長さ2~3cm、幅は0.5~1mmくらいの線虫で、サバ、アジ、サンマ、カツオ、イワシ、サケ、イカなどの魚介類に寄生します。アニサキスが寄生している生鮮魚介類を生で食べることで、アニサキスが胃壁や腸壁に刺入して食中毒(アニサキス症)を引き起こし、激しい腹痛、悪心、嘔吐を生じます。予防方法は、魚を丸のまま購入する場合は新鮮な魚を選び、速やかに内臓を取り除く事、調理する場合は目視で確認して、できるだけアニサキスを除去することが大切です。75℃5分以上の加熱、又は-20℃で4時間以上の冷凍で食中毒を防ぐことができます。       
   2) クドア・セプテンプンクタータ
  クドアは、主にヒラメの筋肉に寄生する粘液胞子虫です。クドアが大量に筋肉中に寄生したヒラメを非加熱(刺身、マリネ等)で食べると、数時間程度で下痢・嘔吐・胃部不快感を引き起こしますが、症状は軽度であり、多くの場合、翌日には回復します。75℃5分以上の加熱、又は-20℃で4時間以上の冷凍で食中毒を防ぐことができます。    
   3) サルコシスティス・フェアリー
  サルコシスティスが多数寄生した馬肉を生で食べると、食後数時間で、一過性の下痢、おう吐、腹痛など引き起こしますが、症状は軽度で、速やかに回復します。他の寄生虫と同じように75℃5分以上の加熱、又は-20℃で4時間以上の冷凍で食中毒を防ぐことができます。      
                 
                 



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