2021.1.5
no.52

食品表示の歴史
1  3つの法律(食品衛生法、JAS法、健康増進法)それぞれの食品表示の歴史
   1)食品衛生法による食品表示  
   1948年(昭和23年)に食品衛生法が施行され、その時、食品の安全性を確保するため、一部の食品に「名称」、使用された添加物の内の一部の「添加物名」、「製造者の氏名・所在地」、「製造年月日」の表示が義務付けられ、1961年(昭和36年)には保存基準が定められたものについては保存方法の表示が義務付けられました。その後、食品の範囲は徐々に拡大され、1969年(昭和44年)には容器包装されたすべての加工食品に表示が義務付けられました。また、「添加物名」についても、表示対象の範囲が徐々に拡大され、1989年(平成元年)には化学的合成品以外のいわゆる天然添加物についても表示が義務付けられました。1995年(平成7年)には「製造年月日」に代えて、「消費期限・品質保持期限」の表示が義務付けられました。
  新しい動きとしては2001年(平成13年)にアレルギー表示制度、遺伝子組換え食品表示制度がスタートしました。
 
 
   2)JAS法による食品表示  
    戦後の容器包装された加工食品の品質は粗悪なものが多く、見た目で消費者が購入しても、品質で裏切るものも多数ありました。1960年(昭和35年)に発生した『にせ牛かん事件』(牛の絵が描いてある牛肉の缶詰の原材料が実は馬肉であった、という事件。)を契機に、1961年(昭和36年)に一部の加工食品について、一定品質を確保した食品にJASマークを付与するJAS規格制度がスタートし、JAS規格の中に表示規格(「品名」「原材料」「内容量」「製造年月日」「製造者の氏名・所在地」)が定められました。
 1970年(昭和45年)にはJAS規格が定められた食品群については、マークのあるなしに関わらず食品表示が義務付けられる品質表示基準制度がスタートし、2000年(平成12年)にはこの品質表示基準が全加工食品に拡大ざれました。
 新しい動きとしては2000年(平成12年)に原料原産地表示制度、2001年(平成13年)に遺伝子組換え食品表示制度がスタートしました。
 
     
   3)健康増進法による食品表示  
   戦後の国民の栄養状態は芳しいものではなく、国民の栄養を改善するため健康増進法の前身の栄養改善法が1952年(昭和27年)施行され、強化食品を規定した特殊栄養食品制度がスタートしました。年が経つにつれて、国民の生活水準も上がり、栄養不足だけでなく、栄養過剰も叫ばれるようになりました。このため、1995年(平成7年)に国民の健康づくりを推進する目的で栄養表示基準制度がスタートし、栄養強化食品制度は廃止されました。2003年(平成15年)には栄養改善法に代わり健康増進法がスタートし、その中に栄養表示基準が位置付けられました。
 
     
     
   消費者庁資料  
     
 食品表示法への統合の道筋  
  1)食品の表示に関する共同会議  
  2001年(平成13年)の国内でのBSE発生を契機に、政府の縦割り行政が見直され、特に厚生労働省と農林水産省の連携強化が強く叫ばれるようになりました。このため、食品表示のルール決めについても、厚生労働省、農林水産省が別々に論議し決めるのではなく、厚生労働省と農林水産省が共同で会議の場を持ち、食品衛生法の食品表示もJAS法の食品表示もその場で論議して決めていくことになりました。
 2002年(平成14年)12月、第1回食品の表示に関する共同会議が厚生労働省薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会表示部会食品表示調査会、農林水産省農林物資規格調査会表示小委員会の位置づけで開催しました。そして、食品の表示に関する共同会議は消費者庁が創設される直前の、2009年(平成21年)8月第45回食品の表示に関する共同会議まで7年9か月続きました。
 その間、食品の表示に関する共同会議では食品衛生法、JAS法の個別の案件だけではなく、食品衛生法、JAS法の食品表示ルールの矛盾の解消についても論議を重ねました。その一番の成果は品質保持期限と賞味期限の賞味期限への一本化が挙げられています。 

 
 
     
  2)消費者庁、消費者委員会の創設   
   2009年(平成21年)9月、時の福田総理大臣の強いリーダーシップの基、従来の縦割り的体制に対する消費者行政の一元化を実現するため、強力な権限と必要な人数を揃えた「消費者庁」を創設しました。また、食品表示等のルールを決定するための検討の場としての審議会については、従来は同じ組織の中で設置していましたが、今回は独立した第三者機関としては内閣府に消費者委員会を創設し、消費者委員会の中で消費者庁の諮問に応じて審議を行い、結果を消費者庁に答申するスタイルを取ることにしました。
 消費者庁が発足したことにより、消費者に身近な食品表示については所管が厚生労働省、農林水産省から消費者庁に移り、消費者庁は食品衛生法、JAS法、健康増進法の食品表示に関連する箇所を所管することになりました。
 
     
  3)食品表示一元化検討会  
  消費者庁が創設した時から、食品表示のルールは食品衛生法、JAS法、健康増進法と別々の法律で規定するのではなく、一つの法律で規定するべきとの方針があったように聞いていますが、外部の委員での検討は2011年(平成23年)9月より、①食品表示の一元化に向けた法体系の在り方 ②消費者にとってわかりやすい表示方法の在り方 ③一元化された法体系下での表示事項の在り方 の3点を検討課題として、食品表示一元化検討会がスタートしました。12回の検討会を経て、2012年(平成24年)8月に食品表示一元化検討会報告書が取りまとめられました。この結果も踏まえ、消費者庁で検討を重ね、食品表示法は2015年(平成27年)6月28日に公布、その後、具体的な表示ルールである「食品表示基準」が策定され、2017年(平成29年)4月1日より施行されました。そして、5年間の経過措置期間を経て、2020年(令和2年)4月1日に完全施行されました。
 
 
     
                 



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