no.5 2007.12.21
各国の輸入食品等の違反事例(2007年)から見えること

平成19年11月、輸入食品衛生管理者の養成講習会が東京、大阪で開催され、計143名の管理者があらたに誕生しました。筆者も、莫大な情報を一挙に詰め込まれた15年前を思いだします。

既に資格を有する方々への更新研修も上記二箇所プラス福岡にて実施され、合計340名もの参加を得て、厚生労働省の各担当官を講師とした「この二年間の法規等の変更点その他」について、研修が行われました。法規・基準等についても日々改正・新設等で変化していることに気づかされ、あらためて、日常的な情報確認の必要性を感じます。

さて、輸入食品衛生管理者として、最も身近な情報としては、輸入時違反の実例が挙げられますが、日本を含めEU、米国、中国の発表する「輸入時の違反事例」を見ていますと、従来と少し異なる傾向がみられ、生産、加工、消費のそれぞれの環境の変化を考えさせられます。たとえば、
@ トルコ産の乾燥イチジクからアフラトキシンの検出が多発している。
アフラトキシンは、そもそも七面鳥の餌から発見された歴史を持ち、トウモロコシ等の穀類、ピーナッツ等の種実類、ナツメグ等の香辛料等からの検出が多く、乾燥果実やジャムのような「糖度の高い低水分の食品」にはあまり見られない問題でした。
アフラトキシンの原因菌であるAspergillus,flavusは、熱帯〜亜熱帯菌として知られており、日本では沖縄以南、西欧ではイラン以南の食品にしか発生しないというのが常識でしたが、いつの間にかトルコも常在菌になったということでしょうか。これからは、干しぶどうやあんずなども注意が必要なのかもしれません。地球温暖化?がこんな形で影響してきたのでしょうか。
A ガラス片、金属片、プラスティック片の異物発見による輸入禁止・回収が海外でも多発している。
従来、諸外国では、商品回収や輸入禁止措置は「“多数の消費者への健康影響”を防止するために発令されるもの」であり、ガラス片混入等は、多数発生するものではなく“自主的に”回収すべきか否か検討するべきものとなっていたようです(過去の経験ですが、ガラス片混入をメーカーにクレームした所、ロット不良と認めてもらえなかった・・・)それが、いつの間にか国として輸入禁止する時代(最近の例ではチョコレート)になったようです。日本人から見れば良いことなのですが、異物の種類ごとの寸法から形状まで仕様書に指定しなければならない時代が来たかもしれません。
B 食器やカップ、食品容器等から重金属他の溶出・検出による違反が多発している。
使用すべきでない素材を使ったもの、表面デザインのコーティング/不溶処理が不足しているもの、等の初歩的な問題によるものが多数を占めている様です。
そもそも、皿等を彩色する顔料や染料は、水銀、カドミウム、鉛、亜鉛等の金属を主成分とするものが多く、溶出すれば人体への影響力も大きいでしょうから、食品に直接触れるもの、口に触れるもの、乳幼児用おもちゃは「溶出しない様な処理が充分か」ということを第一に確認するようにしましょう。さらに、発展途上国では、環境汚染への配慮が足りないこともあり、先進国では使用をやめた有機溶剤や、重金属の使用が見られ、従業員の健康被害、土壌や水源汚染を引き起こしているとの情報もありますので、このような素材を使用しない様指導するのもまた大切な仕事です。

いずれにしても食に対する「安全」のメジャー(秤、基準)は国ごとに異なるとともに、年々変化しているものです(温暖化?によるリスクの変化、国民意識の変化、教育レベルの変化、国際的標準化によるものなど)ので、日本国内ばかりでなく、海外のリコール情報にも注意をはらい「新たな傾向や変化」を把握しておくことも大切です。



(C) 2009 Association for the Safety of Imported Food, Japan