2019.9.2
no.44

食品衛生法の15年ぶりの大改正
   
   2000年には加工乳の大規模食中毒事件、2001年には日本で初めてBSEが発見され、国民の食品安全への信頼は大きく損なわれ、日本の食品安全行政が大きく揺らいだ年でした。そして、これを契機に日本の食品安全行政が大きく見直され、2003年に食品安全基本法の制定、残留農薬のポジティブリスト制度の導入、輸入食品の監視指導計画の策定及び総合衛生管理製造過程の更新制導入を柱とした食品衛生法の大改正が行われました。(2003年5月30日公布)
 あれから15年、食品の安全を取り巻く環境が変化し、食へのニーズの多様化、食のグローバル化が進展してきました。また、広域的な食中毒事案の発生やいわゆる健康食品による健康危害の発生、2020年に実施される東京オリンピック・パラリンピックを控え、国際基準に整合した食品衛生管理が求められてきました。これらの状況を踏まえ、今回、食品衛生法の大改正が行われました。(2018年6月13日公布)
 
   
  主な改正点は以下の7項目です。 
  1 広域的な食中毒事案への対策強化  
    自治体間の連携の不備により、2017年夏に発生した腸管出血性大腸菌による広域的集団食中毒事案は早期探知に後れを取り、対応が後手後手に回りました。このような背景を踏まえ、広域的な食中毒事案の発生や拡大防止のため、7つのブロックごとに関係者で構成する広域連携協議会を設置し、効果的な原因調査、適切な情報発信を実施することとしました。   
  2  HACCPに沿った衛生管理の制度化
 
    HACCPによる衛生管理は1993年にコーデックス委員会においてガイドラインが取りまとめられ、欧米を中心に義務化が進んでおり、今や国際標準となっています。一方日本では、大手食品事業者ではHACCPの取り組みが進んでいますが、中小食品事業者での普及率は3割程度にとどまっています。このような背景を踏まえ、今後食中毒の発生のさらなる低減や、諸外国との食品の輸出入を円滑に行うため、原則すべての食品事業者に、一般的衛生管理に加え、HACCPに沿った衛生管理を求めることとなりました。ただし、規模や業種等を考慮して一定の食品事業者には取り扱う食品の特性に応じて柔軟に対応することを認めました。   
  3  特別の注意を必要とする成分等を含む食品による健康被害情報の収集   
    プエラリア・ミリフィカによる、いわゆる健康食品の健康被害事例が5年間に233件報告されました。こうした状況に対応するため、健康被害の発生を未然に防止する見地から、厚生労働大臣が特別の注意を必要とするものとしてあらかじめ指定する成分等を含有する食品について、食品事業者に適切な品質・製造管理を義務付けるとともに、健康被害情報を把握した場合には自治体への届出を求めることとしました。   
  4  国際整合的な食品用器具・容器包装の衛生規制の整備   
    日本の食品用器具・容器包装の規制はこれまで禁止された物質でなければどのようなものでも使用できる「ネガティブリスト制度」で運用されてきました。しかし、海外では認められた物質以外は原則使用禁止とする「ポジティブリスト制度」が主流であり、今回、規制の国際整合性を考慮し、日本も「ポジティブリスト制度」に転換することとしました。また、対象物質は海外の実態も踏まえ合成樹脂(ゴムを除く)としました。あわせて、この制度が実効ある制度とするため、事業者に適正製造管理規範(GMP)の遵守、販売先にポジティブリスト適合情報の提供を求めることとしました。   
  5  営業許可制度の見直し、営業届出制度の創設   
    HACCPの制度化に伴い、営業許可の対象業種以外の事業者の所在地を把握するため、営業届出制度を創設しました。それに併せて昭和47年以降全く見直しがされていなかった営業許可34業種についても実態に応じたものとするため、食中毒リスクを考慮し見直しを行いました。また、許可対象業種の見直しに伴い、その施設基準についても抜本的な見直しを行いました。   
  6  食品リコール情報の報告制度の創設   
    今までの食品衛生法では事業者の自主的な食品回収については報告の義務はなく、各自治体がそれぞれのやり方で自主回収報告制度を運用しているにすぎず、消費者に的確に自主回収の情報が伝わっていませんでした。このため今回の制度改正で、事業者が自主回収を行った場合の行政への報告を義務付け、消費者や他の事業者への情報提供を図ることとしました。
それと並行して、消費者庁は安全性に関わる食品表示法違反による自主回収について、事業者の届出を義務化する食品表示法改正を行いました。(2018年11月14日公布) 
 
  7  その他   
    輸入食品の安全性を確保するため、食肉、食鳥肉についてHACCPに基づく衛生管理の確認や乳製品・水産食品の衛生証明書の添付を輸入の要件とすることや、自治体等の食品輸出関係事務に係る規定の創設等が行われました。   
       
                 
                 



(C) 2009 Association for the Safety of Imported Food, Japan