2019.7.1
no.43

食品表示法移行まであと一年(2)
   
栄養成分表示の義務化 
   健康増進法では、栄養成分表示は任意表示でしたが、食品表示法に統一するにあたり、消費者が健康で栄養バランスがとれた食生活を営むことの重要性を自らが意識し、商品選択に役立てることで適切な食生活を実践する契機となるように栄養成分表示を義務化しました。表示の基本は健康増進法の栄養表示基準を準用していますが、消費者の分かりやすさの観点、食品事業者の実行可能性の観点から、一部のルールを変更しました。 
   
  変更点1 義務のエネルギー、たんぱく質、脂質、炭水化物、ナトリウムの5項目は従来と同じですが、消費者の分かりやすさの観点から、ナトリウムに変えて食塩相当量を表示することにしました。  
       
  変更点2  消費者の分かりやすさの観点から、表示様式を義務表示項目のみ表示する場合(様式1)と義務表示事項に加え任意の表示事項を記載する場合(様式2)に統一しました。
 
       
  変更点3  食品事業者の実行可能性の観点から、①容器包装おおむね30cm2以下 ②栄養の供給源として寄与の程度が小さい ③極めて短い期間(3日以内)で原材料(含む配合割合)が変更される ④小規模事業者が販売 ⑤酒類 の場合は栄養成分表示を省略できることとしました。 ただし、容器包装に栄養表示(栄養成分やその構成物質等の表示)を行う場合はこの省略規定は適用できません。   
       
栄養強調表示に係るルールの改善   
   栄養強調表示(栄養成分が多いことを強調する表示及び栄養成分が少ないことを強調する表示)は健康増進法の栄養表示基準の表示ルールとほとんど変わっていませんが、元データの食事摂取基準の2010年版から2015年版への改正及び国際整合性の観点から、下記の点が変更になりました。 
       
  変更点1  食事摂取基準から導き出される栄養素等表示基準値の改正により、「高い旨」、「含む旨」、「強化された旨」(絶対差)の基準値が変更されました。このため、今まで栄養強調表示ができたものが、栄養強調表示ができなくなる可能性があるので見直しが必要です。  
       
  変更点2  対象商品と比較して「強化された旨」又は「低減された旨」と表示する相対表示については、コーデックスの考え方を取り入れ、今までは対象商品と比較して基準値以上の絶対差があればよかったのに対し、新基準では絶対差に加えて25%以上の相対差が必要となりました。   
       
  変更点3  今まで何の基準もなかった「糖類無添加」及び「ナトリウム塩(食塩)無添加」の表示についてコーデックスの考え方を取り入れ、表示に基準を設けました。   
       
 栄養機能食品に係るルールの変更
    栄養機能食品の基本的ルールは健康増進法の栄養表示基準とほとんど変わりませんが、一部下記の点が変更になりました。
       
  変更点1  栄養素等表示基準値の改正により1日あたりの摂取目安量に含まれる栄養成分量の下限値が変更になりました。  
       
  変更点2  「n-3系脂肪酸」、「ビタミンK」、「カリウム」の3つの成分が栄養機能食品の対象栄養成分として追加になりました。   
       
原材料名表示に係るルールの変更 
   原材料名表示に係る2つのルール変更が行われました。 
       
  変更点1 JAS法の品質表示基準では大部分の加工食品が食品素材と添加物を分けて多いもの順に記載することとなっていましたが、一部の個別食品で食品素材と添加物を分けずに多いもの順に記載するルールがありましたが、食品表示法に統一するにあたり、一部の個別食品のルールをなくし、すべての加工食品で食品素材と添加物を分けて多いもの順に記載することとしました。   
       
  変更点2 JAS法の加工食品品質表示基準において、複合原材料表示のルールで括弧の中を省略する規定はありましたが、食品表示法に統一するにあたり、括弧の中を省略する規定に加えて、ある一定の条件下では複合原材料名を書かずに括弧の中の原材料を分割して表示することを可能にしました。   
       
販売の用に供する添加物の表示に係るルールの改善
   今までは販売の用に供する添加物の表示は食品衛生法のみのルールに従っていれば問題ありませんでしたが、食品表示法に統一されるにあたり、JAS法、健康増進法のルールが適用になるため、消費者向けに販売される添加物については「栄養成分表示」「内容量」「表示責任者の氏名又は名称及び住所」の表示が追加となりました。 
       
通知等に規定されている表示ルールのうち、基準に規定するもの 
   フグ食中毒対策の表示及びボツリヌス食中毒対策の表示については安全性の確保の観点から、通知による指導レベルではなく、食品表示基準で規定し、表示義務を課すべき表示ルールとしました。
 また、分かりやすい食品表示基準を策定するという観点から、基準と通知等にまたがっていた特定保健用食品の表示ルールを食品表示基準に一本化しました。
 
       
10  表示レイアウトの改善 
   表示レイアウトに関する2つの改善が行われました。
       
  1)  表示可能面積がおおむね30cm2以下の場合省略できる表示事項が食品衛生法とJAS法で異なっていましたが、食品表示法に統一するにあたり、安全性に関する表示事項(「名称」、「保存方法」、「消費期限又は賞味期限」、「表示責任者」「アレルゲン」及び「L-フェニルアラニン化合物を含む旨」)については、省略不可。その他の表示事項は省略を可能としました。    
       
  2)  JAS法の加工食品品質表示基準では原材料名の表示は食品素材と添加物を分けて多いもの順に表示するとしていましたが、消費者から食品表示と添加物の境目が何処かわからないとの要望が出て、食品表示法では食品素材と添加物を明確に分けて多いもの順に表示することとしました。明確に分ける方法としては、添加物の事項名欄を設ける方法及び添加物の事項名欄の設けない方法(記号で区分する、改行する、別欄を設ける)があります。   
       
 以上、10項目の現行ルールからの主な変更点を説明してきましたが、2020年3月31日までの経過措置期間中においては、製造所固有記号の改善を除いて、一つの商品で旧基準と新基準の混在は許されません。完全移行まであと1年切っていますので、まだ手付かずの食品事業者は早急に準備し、素早い実施をお願いします。
                 
                 



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