2019.5.7
no.42

食品表示法移行まであと一年(1)
ご挨拶
 今後、前任者(檜山さん)の後を継いで天明が「輸入食品事業者の窓」を担当しますので宜しくお願いします。内容は日本の行政の動きを中心に、輸入食品事業者の皆様にお役に立つものをお知らせできればと思っています。2か月ごとの発信を心がけたいと思いますのでよろしくお願いします。
     
   食品表示のルールが2020年4月1日より新しく制定された食品表示法に完全移行されます。以前の食品表示のルールは主に食品衛生法、JAS法及び健康増進法の3つの法律により規定されており、食品事業者が食品表示を作成するためには3つの法律を個別に調べる必要があり、表示ミスを引き起こす原因となっていました。また、消費者にとっても法律によって解釈が違う場合があり、理解するのに難しいルールでした。
 このような課題を解決するため、食品表示法は単純に食品衛生法、JAS法及び健康増進法の食品表示に関する部分を抜き出し結合しただけのものではなく、消費者及び食品事業者にとって分りやすい表示となるように、現行のルールを変えた部分があります。新ルールに移行するにあたり、変更した部分を解説したいと思います。
 
 
     
  【現行ルールからの主な変更点】   
  1 加工食品と生鮮食品の区分の統一  
  2 製造所固有記号の使用に係るルールの改善  
  3 アレルギー表示に係るルールの変更  
  4 栄養成分表示の義務化  
  5 栄養強調表示に係るルールの改善   
  6 栄養機能食品に係るルールの変更   
  7 原材料名表示等に係るルールの変更   
  8 販売の用に供する添加物の表示に係るルールの改善   
  9 通知等に規定されている表示ルールのうち、基準に規定するもの   
  10 表示レイアウトの改善   
   
加工食品と生鮮食品の区分の統一 
   JAS法と食品衛生法において異なる食品の区分については、JAS法の考え方に基づく区分に統一・整理することとしました。このため、食品衛生法では表示対象とはされていない軽度の撤塩、生干し、湯通し、調味料等により、簡単な加工等を施したもの(例:ドライマンゴー)については、食品表示法では「加工食品」として整理され、その結果、新たに、アレルゲン、製造所等の所在地等の表示義務が課されることになりました。
 そのほか、JAS法と食品衛生法において定義が異なる「製造」「加工」についてはJAS法に統一されました。

製造  その原料として使用したものとは本質的に異なる新たな物を作り出すこと 
加工  あるものを材料としてその本質は保持されつつ、新しい属性を付加すること 

 このため、食品衛生法では「製造」と定義されていた「小分け包装」は食品表示法では「加工」と定義されることとなりました。
   
製造所固有記号の使用に係るルールの改善 
   食品衛生法では最終的に食品衛生に影響を与えた製造者等の氏名及び製造所等の所在地を表示することが義務付けられていますが、同時に食品衛生法では、あらかじめ製造者の氏名及び製造所の所在地を消費者庁に届け出た場合、製造者氏名、製造所所在地の表示を固有の記号に代えて表示することができる製造所固有記号の制度があり、食品事業者の多くがこの制度を利用していました。
 しかし、この制度は消費者に製造者氏名及び製造所所在地を隠している、消費者は製造者氏名及び製造所所在地を知りたいとの要望が強く、食品表示法に統一するにあたり製造者固有記号の制度を変更しました。新しい制度は同一製品を2以上の工場で製造する場合に限り製造者固有記号の制度を利用可能とするもので、1つの工場でしか製造しない製品は製造者固有記号の制度を利用できなくなりました。そして、食品事業者が製造者固有記号の制度を利用した場合、消費者が製造者氏名及び製造所所在地を知りたいときは、それを伝える義務が発生しました。
 
   
アレルギー表示に係るルールの変更 
   アレルギー表示のルールは食品衛生法で規定され、2001年に制定されましたが、制度自体は食品表示法に統一されるまで、14年間全く変更はありませんでした。今回食品表示法に統一されるのにあたり、アレルギー患者の意見を聞き、アレルギー患者に分かりやすいようにルールの変更を行いました。主な変更点は以下の通りです。 
   
  変更点1 特定加工食品及びその拡大表記を廃止することにより、より広範囲の原材料についてアレルゲンを含む旨の表示を義務付けることとしました。
(特定加工食品とは一般的にアレルゲンを含んで製造されていることが知られているため、それらを表記しなくても、原材料としてアレルゲンが含まれていることが理解できる加工食品を言います。)

変更の理由は、近年特定加工食品が書いてあっても、そのアレルゲンが含まれているとは理解できないアレルギー患者が増えてきたためです。一例をあげると、マヨネーズ(卵の特定加工食品)と書いてあっても卵が含まれていると理解できないアレルギー患者が増えてきたことが挙げられています。
 
       
  変更点2  アレルギー表示には個別表示(個別の原材料毎にアレルゲンが含まれているかを表示する方法)と一括表示(原材料表示の最後にまとめてアレルゲンを表示する方法)の二つの表示方法が認められていましたが、アレルギー患者に分かりやすいように個別表示を原則とし、一括表示は例外で認めることとしました。   
       
  変更点3  例外扱いの一括でアレルゲン表示する場合、一括表示欄を見ることでその食品に含まれる全てのアレルゲンを把握できるよう、一括表示欄に全て表示することとしました。   
                 
                 



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