2012.5.28
no.27

中国産ゼラチン(カプセル)からクロムが検出された事について

 事の発端は明らかではありませんが、本年(2012年)4月、医薬品用カプセルから基準を超えるクロムが検出され、一部の医薬品が回収されていると言うことで、食品には関係ないと思っていましたが、国家食品薬品監督管理局による市販品検査と、製薬業者への立入り検査の結果、15企業74品種からクロム含量超過のものが発見されてしまい、重大事件として周辺調査が開始されました。
 調査の結果「カプセルの原料に使用されたゼラチン」に問題ありとして下記の2業者が摘発されましたが、その後、香港、台湾でも35種のカプセル薬品からも同様にクロム含量超過のものが発見され、どこまで拡大するかが危ぶまれます。

【問題とされているゼラチンの製造業者】
学洋明膠蛋白廠(河北省衡水市阜城県)
河南省焦作金箭実業総公司(河南省焦作市)

 なお、学洋明膠蛋白廠では、工場担当者が工場に放火し、関係書類を廃棄、処理中の原材料を川に流す等の調査妨害があり、原料から出荷先への調査が出来ていない等の情報もありましたが、5月に入ってニュースソースからは姿を消してしまい、情報がつかめなくなりました。
 厚生労働省経由の情報では、「違反が発見された製薬企業 (15社) 」に空カプセルを納入していたカプセル製造企業は、16社とされ、そのリストも公表されていますが※別添、元凶であるゼラチン製造業者(上記2社)が、どこに納入していたのか(食品製造企業はあるのか・・)等についての情報がまったくなく、食品への波及が心配です。
 そもそも、なぜ、ゼラチンにクロムが検出されるのか、についてですが、食品・薬品用のゼラチンは、食肉処理した残渣(皮、腱、筋、軟骨、内臓、皮その他)又は魚介等から精製しますので、気になるのは鮮度と衛生上の品質くらいであり、心配ありませんが、工業用ゼラチンは「管理者の窓 No21」にも述べた通り、皮革使用されているために(は獣皮ですが、は“なめした獣皮(靴やバッグの端切れ)であり、防腐、着色、硬化防止、脱臭のためにタンニン、クロム、アルミニウム、ジルコニウム、チタン等の塩類を高濃度に含有しており、特に塩基性硫酸クロムは加工中に6価クロムになるので危険)、この革の構成比が大きくなれば、原料由来としての重金属が多く検出されてしまうという訳です。
 なお、②の河南省焦作金箭実業総公司は、中国のゼラチンのトップ企業である青海明膠と金箭実業総公司の合弁企業である事等から、中国産ゼラチンの重金属汚染は医薬品の範囲だけには留まるとは思えず、どこまで拡大するのか、予測が出来ない状況です。
 貴社の製品に「上記の業者のゼラチンが使用されていない事」の点検、さらに、安心のためにも、使用しているゼラチン、コラーゲン、動物蛋白加水分解物、HAP等の「食肉残渣を原料とするもの」についての重金属の検査を検討しましょう。(※国産品との比較が重要です)
 昔の事例ですが、原材料の腐敗防止や鮮度維持のために、考えられない事をしている農家、ブローカーに出会った事があります(果実や野菜にホルマリン散布したり、酸敗臭ムンムンの蒸し米を醤油原料に使用していたり、原料クエン酸やカルシウム剤が工業用だったりと、日本では考えられない事ですが、本当のことです)。
 主要原材料以外の原材料や添加物の製造工場までも点検・監査するのは大変ですが、とんでもない製造工場の製品を使用してしまう事を避けるためにも、出来る限り自分の目で見てまわり、自衛する事が重要ではないでしょうか。




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