no.12 2009.5.25

FDAによるハーブ類・植物加工品の回収指示について



2009年5月7日、FDAはテネシー州メンフィスの「American Mercantile Corporation社」製の150万ドル以上にのぼる製品を不潔な環境における加工品であるとして摘発した。
FDAによると、製造加工の現場を調査した結果、「ねずみやその排泄物、昆虫が混入する状況であり、不衛生な状況で生産された食品の流通を容認できない」としている。
該当する製品は「ダイエット食品、ハーブティーの他、サルサ根やスペアミント葉、コーンスターチ、オレンジピール粉、リコリス粉、サフランを含む製品」と報告された。

上記による大規模な製品回収が発表されると思われますので、該当製品の輸入販売や原料への使用をしていないか迅速な調査が必要です。

これは、昨年末から製品回収が続いているピーナッツ加工品(Peanut Corporation of America社)およびピスタチオ加工品(Setton Pistachio of Terra Bella社)による大規模なサルモネラ食中毒の原因が「不潔な製造環境」によるものであったため、「FDAによる製造現場の調査」が行なわれていた中での処置であり、軽く考え勝ちな「乾燥食品の衛生的加工処理」に関しても、「自主管理」の強化を検討すべき時代となったものと考えます。



〔輸入食品の自主管理について〕
平成20年6月厚生労働省は、輸入加工食品の自主管理に関する指針(ガイドライン)を公表しています、ガイドライン中の以下の項目を参照の上、改めて製造工場の点検を行い、必要に応じて改善を要請しましょう。
ガイドライン第4の2「原材料の受入段階」の(1)の①:原材料の採取~保管~輸送時の汚染防止対策についての管理
ガイドライン第4の3「製品の製造・加工段階」の(1)の②:そ族及び昆虫対策についての管理
国内製造業者向ではありますが、食品等事業者が実施すべき管理運営基準が公表されています。参照してください。


〔サルモネラ属菌のミニ知識〕
米国における食中毒統計 (2008年CDC Food netによる食中毒サーベイランス) 対象地域(10州)における食中毒患者数18,499名の40%を占める。2008年5月米国のハラペーニョ(当初はトマトとされていたが追跡の結果ハラペーニョとされた)を原因食とした約400名の食中毒は記憶に新しい。
原因菌 発生患者数 人口100,000名あたりの発症者数
サルモネラ 7,444 16.20
カンピロバクター 5,825 12.68
赤痢 3,029 6.59
クリプトスポリジウム 1,036 2.25
O-157 517 1.12
我が国でも腸炎ビブリオ菌と一,二を争う代表的な食中毒菌であり(チフス菌やパラチフス菌も属として含まれる)、1999年のイカ菓子による1500名を超える食中毒が発生した。
鶏卵、鶏肉、畜肉に頻度高く検出されるのは良く知られている。最近の検出事例を見ると、米国産アーモンド、タイ産ペパーミント、バジル、アフリカ産ゴマ、ハイビスカス等の乾燥食品からも検出されている。加熱加工がなく、製造ラインの洗浄が困難な製粉・粉砕等の加工設備に関しても、拭き取りや消毒等の実施が必要である。
乾燥に比較的強いが、60℃ 20分間で死滅し、9%以上の塩分、pH4.75以下、4℃以下では発育できない。
健康な大人には感染しても症状の出ない(健康保菌)ことがあり、罹患後2~4週間(10%の者は数ヶ月間)排菌するため、従業員由来の製品汚染から大規模食中毒となり易い。
死亡率は低く0.1~0.2%で、ほとんどが脱水症状による多臓器不全による。

世界的にはS.Typhimurium中毒が主流であったが、比較的少量の摂取で発症するS.EnteritidisやS.Oranienburgによる中毒が増加しつつあるうえに、多剤耐性菌であるS.TyphimuriumDT105などが発見されており、食中毒患者のみならず、獣畜に関する抗生物質の使用方法等の注意が改めて重視される時期にきていると言えよう。





(C) 2009 Association for the Safety of Imported Food, Japan