2023.3.3
no.65

自主回収報告制度について
 1 はじめに
  食品等の自主回収報告制度は食品衛生法では第58条で食品等を自主回収する時、食品衛生上の危害の発生するおそれがない場合を除き、遅滞なく回収に着手した旨及び回収の状況を都道府県知事に届けなければならない、と規定しています。また、食品表示法では第10条の2で食品を摂取する際の安全性に重要な影響を及ぼす事項について、食品表示基準に従った表示がされていない食品の販売をして自主回収する時、消費者の生命又は身体に対する危害が発生するおそれがない場合を除き、遅滞なく回収に着手した旨及び回収の状況を内閣総理大臣に届け出なければならない、と規定しています。
   
 2 自主回収(リコール)報告制度の創設の経緯 
  自主回収報告制度が2021年6月1日に施行される以前は、国は食品等の自主回収情報を把握しておらず、一部の自治体が食品等を自主回収する時、行政に届出をすることを義務化しているに過ぎませんでした。このため、消費者は今何が自主回収されているかを一覧で知ることはできませんでした。
 このような状況を踏まえ、2018年6月に公布された改正食品衛生法の7つの柱の一つとして『食品等の自主回収報告制度の創設』が盛り込まれました。国会での審議の中で食品等の自主回収報告制度は食品表示法でも位置づけるべきであるとの意見が出され、これを受け、消費者庁は食品表示法改正の手続きを進め、2018年12月14日に国会の審議を経て改正食品表示法が公布となりました。
そして、事業者による食品等のリコール情報を行政が確実に把握し、的確な監視指導や消費者への情報提供につなげ、食品による健康被害の発生を防止するため、国は2021年6月1日より事業者がリコールを行う場合は行政へ届出をすることを義務づけました。  
   
自主回収報告制度の仕組み       
3-1   報告対象
    事業者が自主回収を行った中で報告対象になるのは以下の通りです。
   (1) 食品衛生法違反または違反のおそれ 
    ・食品衛生法違反する食品等:腸管出血性大腸菌により汚染された生食用食品、アフラトキシン等発がん性物質に汚染された食品等をいいます。
    ・食品衛生法違反のおそれがある食品等:違反食品等の原因と同じ原料を使用している、製造方法、製造ラインが同一であることで汚染が生じている等として営業者が違反食品等と同時に回収する食品等をいいます。 
   (2) 食品表示法違反 
    アレルゲンや消費期限等の安全性に関する表示の欠落や誤り等をいいます。 
                 
3-2  届出から公表までの基本的な流れ 
    自主回収の届出を行う事業者は基本的に厚生労働省の「食品衛生申請等システム」を用い、以下の事項を入力します。①事業者の氏名・住所 ②商品名、表示内容、その他必要事項 ③回収を判断した理由 ④判明している販売先、販売数量 ⑤回収着手日 ⑥回収方法 ⑦危害の発生の有無 
          
   
  消費者庁資料 
  届出された自主回収情報は健康被害発生の可能性を考慮し、都道府県等でクラス分類がなされます。 
 
  食品衛生法  食品表示法 
CLASS Ⅰ  喫食により重篤な健康被害又は死亡の原因となり得る可能性が高い場合
(腸管出血性大腸菌に汚染された生食用野菜など) 
喫食により直ちに消費者の生命又は身体に対する危害の発生の可能性が高いもの 
CLASS Ⅱ  喫食により重篤な健康被害又は死亡の原因となり得る可能性が低い場合
(一般細菌数などの成分規格不適合の食品など) 
喫食により消費者の生命又は身体に対する危害の発生の可能性があるものであってCLASSⅠに分類されないもの 
CLASS Ⅲ  喫食により健康被害の可能性がほとんど無い場合(添加物の使用基準違
反など) 
 
 
  都道府県等から厚生労働省・消費者庁に報告された自主回収情報はホームページで消費者に公表されます。 
   
 4 自主回収報告の実績       
   
  厚生労働省資料 
   
  2021年6月1日から2022年2月28日までの9か月の報告数は1,430件で食品衛生法関連は464件(33%)、食品表示法関連は958件(67%)、となっており、食品表示法関連が食品衛生法関連の2倍を占めています。
 食品衛生法関連の回収理由の内訳を見てみると「シール不良の製品と同じラインで製造、回収命令当該食品と別ロット品など」が54.4%で、半分以上を占めています。(詳細は上記資料参照)
  
   
   
  消費者庁資料 
   
  食品表示法関連の回収理由の内訳はCLASSⅠ(アレルゲン表示の誤り、欠如等)が58%、CLASSⅡ(期限表示、栄養成分表示、保存方法表記の誤り、欠如等)が42%を占めています。(2021年6月1日から1年間の実績、詳細は上記資料参照) 
   
                 



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