2022.11.1
no.63

植物検疫・動物検疫について
  輸入食品事業者は検疫所への届出に加え、野菜、果物、穀物等の農産物を輸入する場合は農林水産省植物防疫所に、食肉、食肉製品等の畜産物を輸入する場合は農林水産省動物検疫所に届出を行わなければなりません。今回は植物検疫、動物検疫について解説したいと思います。 
   
 1 植物検疫とは
  植物の病害虫が海外から輸入される植物に付着して日本に侵入することを阻止することにより、国内農産物の安定供給の確保及び森林破壊を防止するため、植物防疫法に則り、植物防疫所で輸入検疫を行っています。
   
 1-1  輸入検疫の対象となる植物       
    植物防疫法第2条の「植物」の定義により具体的には、原則として有害植物を除くすべての植物及び一次加工品が検疫の対象となります。 
   ・ 野菜、果物や木の実(生産国や種類によって輸入禁止品になっている場合があります。) 
   ・ 冷凍又は乾燥した野菜や果物 
   ・ 穀類や穀粉 
   ・ 豆類 
   ・ 嗜好・香辛料、植物性漢方薬原料 
   ・ 菜種やごまなどの油糧原料 
  なお、対象植物であっても加工方法(塩漬け、砂糖漬け、小売用容器に密封された香辛料等)や、あんず・かきなどの指定された乾燥果実などは検疫の対象になりません。 
   
1-2  輸入禁止植物と地域 
    輸入禁止植物は万一日本に侵入し蔓延した場合、農作物や森林に大きな被害を及ぼす危険性が高く、かつ輸入時の検査では発見が困難なチチュウカイミバエ、コドリンガ、じゃがいもがんしゅ病菌、タバコベト病菌等の病害虫の発生地から発送され、またはこれらの地域を経由して輸入される植物を対象としています。詳細は植物防疫法施行規則第9条の別表2にとりまとめられています。 
                 
1-3  植物を輸入するには 
    植物検疫の対象となる植物は輸入食品事業者が大量に輸入するものばかりでなく、少量のサンプル輸入や旅行客の携帯品も対象になります。
輸入食品事業者が植物を輸入するためには、輸入する植物について輸出国の政府機関による検査を受け、検疫有害動植物が付着していないことを記載した検査証明書が必要です。
輸入するにあたっては植物を輸入する港を管轄する植物防疫所へ上記の検査証明書を添付した「植物、輸入禁止品等輸入検査申請書」を提出します。輸入された植物は、輸出国の検査証明書が添付されているかどうか、輸入禁止品であるかどうか、検疫有害動植物があるかどうかについて検査を行い、輸入禁止品に該当せず、植物検疫の対象となる病害虫の付着がなければ輸入が許可されます。
詳細は農林水産省植物防疫所のホームページをご確認ください。 
                 
 2 動物検疫とは 
  動物検疫は、動物の病気の侵入を防止するため、動物や家畜から作られる肉製品などの畜産物を対象に家畜伝染病予防法に基づき輸入検査を行う検疫制度です。 
                 
2-1  輸入検疫の対象となる畜産物 
    通常食品として供される畜産物はほとんどすべて指定検疫物として定められており、卵(鶏、うずら、だちょう等)、骨、肉(生鮮肉、塩蔵肉、乾燥肉、煮沸肉等)、脂肪、内臓、乳(生乳、脱脂乳、クリーム、バター、チーズ等)、ハム・ソーセージ・ベーコン等があります。ただし、一部の畜産物(ゆで卵、くじらの肉、ラード、アイスクリーム、プロセスチーズ、乳酸菌飲料等)は検疫の対象外となっています。 
                 
2-2  輸入禁止対象品 
    我が国の畜産に大きな被害をもたらす病性が激しく、伝播力が強い悪性の家畜伝染病(牛疫、口蹄疫、CSF(豚熱)、ASF(アフリカ豚熱)及び高病原性鳥インフルエンザ)については、これを輸入禁止対象疾病と定め、地域を限定し肉・臓器及びそれらを原料とした加工品(ハム・ソーセージ・ベーコン等)の輸入が禁止されています。上記の家畜伝染病以外であっても輸入することにより国内の畜産に大きな影響を及ぼすと判断された場合は輸入停止等の措置が取られます。その例としてBSE(牛海綿状脳症)の侵入防止上の措置があげられます。 
                 
2-3  畜産物を輸入するには 
    輸入検査は、量の多少、個人用、商用等の用途にかかわらず対象となり、動物検疫の対象物を輸入しようとする者は「輸入検査申請書」に輸出国政府機関発行の検査証明書、その他必要書類を添付して輸入港を管轄する動物検疫所へ提出します。動物検疫所は書類検査合格ののち現物検査を省略するものを除き現物検査を実施します。現物検査は家畜防疫官により検査対象物件と関係書類との照合、監視伝染病の病原体の汚染の有無、法令・家畜衛生条件の違反の有無等について行います。そして合格品には「輸入検疫証明書」が交付されます。
詳細は農林水産省動物検疫所のホームページをご確認ください。 
                 
                 
                 



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