2022.7.1
no.61

食物アレルギーについて
 1 食物アレルギーとは
  摂取した食物が原因となり免疫学的機序を介して体にとって不利益な症状(じん麻疹、・かゆみ・下痢・咳・声がれ等)が起こることを食物アレルギーといいます。 
   
 2 食物アレルギーによる症状 
  食物アレルギーにより様々な症状が起こりますが、以下のように分類されています。 
  ・皮膚粘膜症状:じん麻疹、かゆみ、赤み、鼻水、くしゃみ
・消化器症状:吐き気、嘔吐、下痢、腹痛
・呼吸器症状:咳、呼吸時にゼイゼイと雑音を発する、声がれ
・神経症状:頭痛、意識障害、活気低下
・循環器症状:血圧低下、不整脈、頻脈
特に重大な症状としてアナフィラキシーショック※を起こすこともあります。
※アナフィラキシーショックとは発症後短時間に全身にアレルギー症状が起こり、特に血圧低下、意識障害が引き起こされ生命に危険な状態な状態になる事。 
   
 3 食物アレルギーのメカニズム 
  食物アレルギーのほとんどは即時型アレルギー反応で、IgE抗体(免疫グロブリンE)という生体内の蛋白質を介して起こります。IgE抗体が皮膚・粘膜などに存在しているマスト細胞に結合した状態でアレルギー物質と結びつくことにより、マスト細胞内に蓄えられているヒスタミン・ロイコトリエンなどの化学伝達物質が放出され、アレルギー反応が引き起こされます。通常は無用なIgE抗体を作らないように体内で調整されていますが、その機能が弱かったりするとIgE抗体が作られアレルギー症状が起こります。 
   
 4 即時型食物アレルギーによる健康被害の全国実態調査 
  消費者庁の委託を受け相模原病院の海老澤先生らは、令和2年1月~12月、アレルギーを専門とする医者(1,089名)を受診した患者6,677名について氏名(イニシャル)、性別、年齢、原因抗原の摂取食物種、原因抗原、臨床症状等の調査を実施しました。以下に結果をまとめます。   
 1) 年齢分布 
  令和3年度の調査では、0歳が1,876例(30.9%)で最も多く、1・2歳群が1,364例、3-6歳群が1,525例、7-17歳群が906例、18歳以上群338例でした。この年齢分布は過去からほとんど変わっていません。全体の男女比は男女(3,507/2,573)で男性が多い傾向でした。 
   
   
 2) 原因食物 
  令和3年度の調査では、鶏卵2,028例(33.4%)、乳1,131例(18.6%)、木の実類819例(13.5%)でした。前回の調査まで原因食物の上位3品目は鶏卵・牛乳・小麦でしたが、今回の調査では木の実類の割合が増加し、第3位となりました(前回8.2%、第4位)。木の実類の内訳は、くるみが463例で最も多く、以下、カシューナッツが174例、マカダミアナッツが45例でした。 
   
   
 3) 初発の原因食物 
  令和3年度の調査では、初発例の原因食物は、0歳群こそ鶏卵、牛乳、小麦の順でしたが、加齢とともに摂取食物が多様化し、原因物質は大きく変化しました。1・2歳群では鶏卵、木の実類、魚卵、3-6歳群は木の実類、魚卵、落花生、7-17歳群は甲殻類、木の実類、果実類、18歳以上群は小麦、甲殻類、果実類の順でした。木の実類は1・2歳群で2位 (24.3%)、3-6歳群で1位 (41.7%)、7-17歳群で2位(19.7%)といずれも上位2品目に入っていました。小麦は0歳で3番目に多く、いったん上位群に入らなくなりますが学童期から成人にかけて初発例が再び増えました。 
   
   
                 
                 



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