2012.7.31
no.28

EUが塩化ジデシルジメチルアンモニウム(DDAC)の残存量基準を引き上げ

 SCoFCAH(EUフードチェーン及び動物衛生に関する常任委員会)は、本年7月12~13日にEU内の代表を交えて協議し、塩化ジデシルジメチルアンモニウムのMRL(最大残留基準)を緩和することを採択した。これにより、すべての植物及び動物由来食品ならびに飼料について、現行の基準0.01㎎/㎏が0.5㎎/㎏に引き上げられる事となった。当該暫定基準は即日適用とされている。
 事の発端は本年6月にBfR(ドイツ連邦リスクアセスメント研究所)が発表した「DDACの基準を超過した食品がある」という評価報告であり、その後の報告(下記URL参照)から柑橘類、梨類、モモ、ベリー類、かき、キウイ、バナナ、なす、うり、ハーブ、乳、チーズ、アイスクリーム等については0.01㎎/㎏を超過するものが少なくないというデーターが示されたため、欧州議会及び理事会規則(EU No396/2005)を変更する必要に駆られた為である。

〔BfR opinion No027/2012〕
http://www.bfr.bund.de/cm/349/health-assessment-of-didecyldimethylammonium-chloride-ddac-residues-in-food.pdf



 DDAC(塩化ジデシルジメチルアンモニウム)は、我が国では動物用消毒薬として広く知られており、ポジティブリスト制度上「牛、豚、鶏の筋肉・脂肪・肝臓等」に残留基準が定められています。
 真菌類の消毒に有効である事から、鶏舎内への噴霧による空中浮遊菌の減少対策や鶏用飲用水に添加する等(鶏インフルエンザ対策)や、乳牛の乳房の消毒、搾乳のための周辺機器の消毒等に使われる場合があるため、鶏肉や乳及び乳製品への移行/残留が問題となったこともあります(業界団体他による指導や管理向上によって現状では改善されていると思われます。)
 しかし、上記のBfRのデーターのごとく、「果実、野菜、乳製品他」からも検出されているとすれば無視出来ない問題です。当該食品は基準が設定されていないため一律基準である 0.01㎎/㎏を超えたら違反となる訳ですから、さらに基準の緩和などされてしまったら、大変な事になりそうです。
 少なくともドイツ及びその周辺国では、植物についての「カビ発生防止、表面処理」等についてDDACが使用されている可能性が高いと言う事ですから、柑橘類、なす、ハーブ、さらに乳製品等を輸入する場合には、生鮮物として、原材料として、あるいは加工食品としてもDDACが0.01㎎/㎏以下である様に管理しなければなりません、現地に対し「十分な情報の提供」と、「残留量のチェック体制の確認」、「残留量の点検の定例化」を検討する必要があります。
 少なくとも日本では「DDACの基準値は牛、豚、鶏の筋肉・脂肪・肝臓等は0.05㎎/㎏まで、その他は0.01㎎/㎏まで」である事を早急に伝達し、再徹底しましょう。




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